猫ハンターのひみつ


猫いるところ猫ハンター在り。ひとたび猫を発見すればいかなる状況であっても猫写真を撮影する。あのニヒルでハードボイルドな猫ハンターのノウハウをここで一挙公開してみようと思う。



【必要資質】


猫好きであることはいうまでもない。しかし、好きと言っても、冷たくされたからといって逆上して犯罪行為に走るような哀れなふられ男の好きではない。睨まれても、逃げられても、引っ掻かれても、恨まず、怒らず、じっと猫に愛情を注げるくらいの好きでなくてはならない。愛情の対象が人間になると「ストーカー」に認定され晴れて社会的不適格者の道を歩むことになる。相手が猫であったことを、猫ハンターは日々感謝している。また、猫好きでも自宅で猫と暮らしている者には不向きだ。猫ハンターのあの不屈の闘志は、孤独と屈折した猫への愛情のせめぎ合いが源泉なのだ。



【猫ハンター専用デジカメ仕様】


常時携帯が原則。夏は
このようにホルスター
に入れて肌身離さず!

私はデジタル猫ハンターなのでデジカメでのハンティングについて語る。銀塩猫ハンターの解説は他の方のホームページに譲ろう。次元大介のコンバットマグナム、石川五右衛門の斬鉄剣、猫ハンターのデジカメ。生半可なデジカメを使っては命にかかわる。下記の項目に留意して最適な獲物を使ってもらいたい。

1.携帯性
ポケットにいれてすぐとり出せるのがベスト。大きいと猫に余計な警戒心をもたせることにもなる。小型軽量。これでいつどこで猫に会っても大丈夫。
2.即写、連写
常にいつ逃げられるかわからない状況にある。また表情の変化もはげしい。
3.液晶+回転レンズ
アングルフリーを実現。人間の高い視点でなく、猫の視点で撮れる。カメラだけ近づけることができ接近戦でも威力発揮。後述するが、猫の警戒心を削ぐ効果もある。
4.ズーム
接近して撮影できるケースはごくまれである。
5.静音設計
電源を入れるとズームが「じゃあぁぁぁ」と号音を放つデジカメや、シャッター時に「がちゃんぴー」とわめくやかましいデジカメはNGだ。モデル嬢は畳み掛けるシャッター音が重なるにつれてノッてくるらしいが、猫の場合、逃げられるだけだ。
6.感度
最近高性能化が進むデジカメだが、明るさには、まだ差がある。暗い隙間にいることの多い猫の撮影にはやはりCCD感度は重要だ。感度が低ければ手ブレも多くなり猫の動きも追いきれずボケ写真になる。特に、高画素のデジカメは暗さに弱いことがあるのでよくスペックに注意。
7.その他
操作性や携帯性、機動性を殺してまで画質に拘ってもろくなことはない。画質は最近のデジカメは好みの差こそあれ、おおむね及第点だ。画素数だって80万画素で十分だ。私のデジカメなんて45万画素だ。これでこんな鼻血モノの写真が撮れるのだ(自画自賛)。

実はこの全てを網羅したデジカメはまだ存在しない。ちなみに私はRicohのDC-3Zというデジカメを愛用している。1.4.5は網羅しているし操作性もよいのでそこそこ満足しているのだが、2.の速写、連写が弱いところとち暗さに若干弱いのが残念だ。ちなみに、最近回転レンズ系のデジカメが激減している。デジカメが普及を始めて一般の使用者が今までの銀塩的撮り回しを要求してきたことに対し、メーカーが対応したと考えられるが、非常に嘆かわしいことだ。




【標 的 探 索】


恋愛に出会いが肝心なように、猫ハントも出会い無しには始まりはしない。ハンターたるもの外出時は常に五感を総動員しているべきだ。猫は特に気配を消すのが得意である。一番頼れるのはやはり視覚だ。きょろきょろしながら歩くのは変質者と間違われないかと危惧するかもしれないが、それほど自分が世間から注目されていないことに程無く気付くだろう。

それにしても、ただきょろきょろすればいいわけではない。そこは当然注目ポイントがある。猫は「すごしやすい場所」を好む。単純に言えば夏なら風通しの良い日陰、冬なら心地好い陽だまり。逆にこういった環境をのぞめない日和には出会いはあまり期待できない。また、猫には定位置があることが多い。一度猫に遭遇したポイントはきちんと記憶しておくことが必要である。


【戦  術】



1.発見と遠距離攻撃
さて、猫を発見したらまずはデジカメを起動する。すぐ取り出せるような場所に収納しておくのはいうまでもない。最近改善されて来てはいるが、デジカメは一部の製品をのぞき起動が遅い。撮ろうという段になってから起動していては間違いなくシャッターチャンスを逃す。また、起動音で警戒されることもある点も考慮してほしい。ズーム等の起動音が気になる時はジャケットの中で起動する等の工夫も有効だ。ちなみにいうまでもないが、撮影時にデジタル音のするデジカメは設定できちんと音を殺しておくこと。電車の中でザウルスを音も消さず(多分消し方を知らない)ぴこぴこ言わせてモバイラー気取りのとんまなサラリーマンのようなまねだけは避けたいものだ。猫がこちらに気付いていない場合、距離4〜5メートルの接近で一度ズームを使って撮影しておく。以後できれば一歩近づくごとに1枚撮影する。デジカメにフィルムコストが無いメリットをここで最大限活用して欲しい。気付かれて逃げられたらあとの祭りなのだ。そのうち遅かれ早かれ向こうはこちらに気付く。いくら猫ハンターといえど、生まれながらのハンターである猫の目を逃れることは不可能だ。その時の態度でだいたいこの猫が慎重派か友好派か見当がつく。運が悪ければ目が合った瞬間に逃亡される。そんなときは「ふ、俺も嫌われたものだな!」とさびしく嗤って去るのが良い。深追いしてさらに心の傷を深めるのも悪くはないが、恨みを忘れない猫のこと再会の可能性を考えたら無茶は禁物だ。

2.接近戦


接近するときはゆっくりと、しかしじりじりと動いたりしてはいけない。猫は敏感に緊張のみなぎった空気を関知する。あくまで平常心だ。今晩のおかずの献立でも考えながら事に当たるのが丁度いい。警戒心の強い猫は自分が見られていると気付くとまず警戒する。どこから見てもあやしい猫はんたーが警戒されずに接近するにはどうしたら良いだろう。ここで意外にもデジカメが活躍する。猫は自分が狙われていると思うから逃げる。だから視線をデジカメの液晶に集中しあたかも「おれは今デジカメを見ながら歩いているのだ。お前なんか興味ない」というポーズをとる。これは驚くほど効果的だ。この技はレンズ固定型カメラでは不可能だ。私が回転型デジカメに執拗にこだわるのには、西荻の隠れた名店 和菓子の「喜多屋」が、あんに十勝産の小豆しか使用しないのと同様に深い訳があるのだ。

3.接触
日ごろの行いと運が良ければ、友好的な猫に出会う時も有る。近寄っても怒られないときはまず頭を掻いてやってみる。反応が良ければ背中も掻いてみる。そして、あんなことやこんなことや○△×なこともできるかもしれない。ああ我が人生に悔いなし。もちろんこれも深追いは怪我の元だ。

4.別れ
別れに涙は禁物である。生きていればまた会えることもあるさ。笑顔で別れよう。




【デジカメ撮影奥義】


基本的なデジカメの撮影テクニックはここでは割愛する。猫ハンターに役立つテクのみ紹介する。

1.たくさん写せ
とにかくたくさん撮ることだ。フィルムコストはゼロだ。ケチることはない。1秒毎に猫はいろんなポーズをとってくれる。
1.アングルは低く
回転レンズデジカメのアングルフリーを生かし、なるべく低く構えてみることだ。目線の高さを猫に合わせると違う世界が見えてくる。それに猫は相手が自分より低い位置にいると安心する。
油断している所を下からぐへへ・・・。何か違う。

2.大きく撮る時はカメラを近づけろ
もともと猫ハンターは芸術カメラマンではない。芸術的に撮る必要はないのだ。とにかく大きく撮るのはいいぞ。近づけ!!でもってパソコンの画面にでっかく表示するんだ!接近して撮る場合は液晶を見ながらカメラだけ近づけるほうが逃げられにくい。
3.フラッシュ撮影では敵の注意を逸らせ
フラッシュで猫を撮影すると、必ず目が光ってしまう。これは猫の瞳がカメラにフォーカスしているからである。だから視線を逸らせてやればいい。片手にカメラ、残った片手がオトリになるのだ。「俺が奴の注意を逸らす。その隙を狙え」ということだ。








【反 則 行 為】


これに違反すれば問答無用でライセンス剥奪である。注意するように。


1.不法侵入
去っていく猫を追ってふらふらと・・・、遠くからこちらににっこりと笑いかける猫につられてふらふらと・・・私有地に踏み込んでしまわないよう注意すること。私も一度しかられた。反省。

2.拉致監禁行為
無理矢理つかまえたり、連れて帰るなど猫先生の自由を奪う行為は当然御法度である。

3.名誉毀損
猫先生は小さくても偉いのである。話しかける時も決して礼儀を欠いてはならない。対等に話すのは良いが、「ボク、どこから来たのぉ?」とか幼児相手のような応対をするのは非常に失敬である。まあ、逆に馬鹿にされるのがオチだが。

4.収賄行為
接近するために問答無用の技がある。食べ物で釣るのだ。だがあえてそれは反則技と言わせてもらう。それは攻略本をみながらゲームをやるようなものであり、日米首脳会談でいきなり袖の下を出すに等しく、ウルトラマンが怪獣に向かって変身直後に波動砲をぶっ放すくらい無分別な台無し行為である。そんなことではお客さんを満足させられない。フェアなハンターを志すなら絶対にしてはいけない(もちろん事後にこころづけをわたすのはやぶさかではない)。実際、以下のような問題があることを指摘しておこう。

1.猫との対等な賭け引きを楽しめない。
2.写真を撮っても食べている表情ばかりになってしまう。
3.賄賂は良くない。

また、あとでこころづけを渡す場合も状況をわきまえること。不相応な額を渡したりすれば逆にあとで猫先生にご迷惑をかけることになる。「猫に小判」とはそういう意味だ。いやそれは嘘だ。



あとは努力あるのみだ。だが、ファインダー、液晶を通して猫を見るだけが猫ハンターではない。たまにはカメラを捨てて直接猫先生と語ることも忘れずに。では健闘を祈る。にゃぁ。


すすめ!猫ハンターへ