昔、「こげ」という猫がいた。
鯖が東京で妹と同居中に拾って同居していたのだが、妹の就職とともに実家に連れて行かれた。自分でいうのもなんだが、私はすごく愛されていた。例えば、マンションの階段の足音きいただけで迎えに来て待ってるくらい(妹、ひよ談)。ところが、実家に帰ったらものの数カ月で私のことは見事に忘れられた。忘れられただけでなく完全に「敵」扱い。私が帰省すると、逃げる、隠れる、出てこない。他の赤の他人の場合、無関心なだけなので明らかに態度がおかしい。
そこで、ある仮説に行きついた。
記憶力が弱い彼は、私についてほぼ忘れ去った。それでも、記憶の片隅に「何か」が残っていたのではないか。しかし、その「何か」には敵味方の識別子がついていなかったのである。「こいつのことはなんか知っている気がする」が、「敵か味方かは憶えていない」、なんかこわいので「敵だと思っておくのが安全だ」。
どうもそういうことらしい。そこから数日かけて、「俺は怪しくない」アピールをしてやっと一般人の扱いをしてもらえるようになった。ちなみに猫への有効なアピールは、アピールしないことである。アピールしたらよけい逃げる。ややこしい。要は、目をあわせない、熱い視線を送らない、追いかけない、無関心を装うなど。
で、本題だが、
一昨年に家を出た次男が同じ目に遭っている。
彼は明らかに「きび」に嫌われている。年末年始に帰省した次男が階下にいると、気が付くと二階に避難してしまい降りてこない。ごはんになっても来ない。むりやり連れてくるとご飯食べたらそそくさといなくなる。「きび」は「こげ」ほど弱虫ではないので一目散というほどではないが、ごはんに来ないのは明らかに異常。これはもう同じ症状だ。ひよや、長男は笑って見ているが、私だけは気持ちがわかる。わかった上で笑って見ているのだが。
ところで、「とち」は特に逃げないのだが、彼女は次男をちゃんと憶えていたのだろうか、それとも完全に忘れ去っているのだろうか。とりあえず笑って見守ろう。
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